Column [BackGround Game]

 【コラム】

 BGG 〜『電子の精霊ちびっと』紹介〜

 1998 高沢秀人


音楽は、じっくりと鑑賞しながら聴くものから、何かをしている後ろで流し聞きするものに変化を遂げてきた。より、日常の生活に溶け込んだものに変わってきたと言ってもいい。
ゲームも、時間をかけてじっくりと堪能するものと、小物として携帯し、空いた時間にちょっと楽しむという性質のものに分化しつつあるようだ。たまごっちや携帯チェーンゲーム機の成功はその現れだといっていいだろう。
そんな、何か別のことをしている後ろでそっと進行させて楽しむ、生活の一部としてのゲームを、ここではバックグラウンドゲーム(略してBGG)と呼びたい。

さて、そんなBGG作品群の中に、一風変わった新しいものを見つけた。
それが、今回紹介する『電子の精霊ちびっと』である。
ソフトを起動させて“電子の精霊”をデスクトップ上に出すと、表情を変えながらふわふわと漂い、時々ヘンなひとりごとをしゃべったりするという、基本的にはアクセサリーソフトだ。

しかし、ただのアクセサリーソフトではない。

このソフトの特徴は、デスクトップ上で育てた“電子の精霊”を、パソコンの内部に広がる“電子の世界”に冒険に出すことができるというところである。
ユーザーが“電子の精霊”を冒険に出すと、あとは、その精霊が自分の判断で勝手に冒険を進めてくれる。そして旅先から、10分おきくらいの間隔で、冒険の様子を知らせるメールを送ってくれるのである(本物のインターネットメールではないが)。
メールの内容は、「怪物に出会った」「秘密の隠し扉を見つけた」「酔っ払いにゲロをかけられた」「おいしそうなお店を見つけた」など、バラエティに富んだ他愛ないものだ。
しかし例えば、朝出社して仕事を始める前に精霊を3時間冒険に出すと、ちょうどお昼休み頃に戻ってくるので、お弁当でも食べながら今までに送られてきたメールをまとめて読むといった遊び方ができるのである。もちろん、メールが届くたびに仕事の手をちょっと休めて読んでもいい。まさにバックグラウンドゲームという呼び方がピッタリのソフトだ。
精霊は冒険先でいろいろなアイテムを拾ってくるので、それらを集めるのも楽しいだろう。アイテムにはそれぞれ説明書きが添えられており、その数は400種を超えるという。さらに、電子の世界のすべての謎を解くと現れる“幻の島”というものが存在するなど、冒険意欲をかきたててくれる要素は満載である。
その他にも、“電子の精霊”の冒険の舞台となる電子の世界の形が、それぞれのユーザーのパソコン環境によって変わるようになっていたり、精霊をバイナリーデータ化して、普通のメールに添付して友達に送ることができたりと、ユーザー同士のコミュニケーションを促す仕組みがいろいろ搭載されている。
『電子の精霊ちびっと』は、そんな、新しい試みがたくさんつまったBGGである。
発売元のバンプレストのホームページから体験版をダウンロードできるので、一度遊んでみてはいかがだろうか。

『電子の精霊ちびっと』はWINDOWS95&98用(Meでは動作しますが、NT/2000/XPでは動作しないようです)。1998年12月4日に発売された。店頭での実売価格は3000円前後。

追記:1998年12月20日
【ちびっとに関するホームページ】
ブレイク寸前か!? ユーザーによる草の根ページ続々登場!

★ちびっとの冒険記録
★電子の精霊ちびっと 天空の庭園


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 日本偽現実工学会会報 [The Bulletin of Japanese Fake Reality Engineering Society]
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