Plan [The Tower]

 【企画】

 The Tower

 1999 真野克彦


【コンセプト】

■ゲームでゲームのドキュメンタリーをやりたい
インベーダーゲームの流行からはや20余年。
コンピューターゲームにも歴史と呼べる程度の何かが積み重ねられ、世の中にアンソロジーものやリバイバルものが制作されるまでに至った。しかし、それらは当時の作品の復刻にとどまっており、その作品がその時代に出現したときの空気までは伝えてはくれない。

ただの憧憬かもしれないが、昔のゲームはその容量以上の奥行きが感じられた。
ゲームの世界はただの箱庭ではなく、そこから別の異世界につながっているような未知なるものを含んだ存在だった。
その最たるものが『ドルアーガの塔』ではないかと思う。今見ると不条理の塊でしかないようなあのゲームに、当時、なぜプレイヤーはあんなにも熱くなれたのか?
彼らは一体、塔の頂上に何を見ていたのだろうか?

本企画は、その“何か”を探求する過程を、一本のゲームとして構成するものである。
具体的には、宝の出し方を一新した『ドルアーガの塔』と、それを取り巻く環境(ゲーセンとそこに集まるマニアたち)をゲーム内に再現する。
プレイヤーは“タワー”をクリアすることを目標に、“タワー”をプレイすることはもちろん、クリアのための情報の収集のために街を散策することができるようにする。
また、随所に当時のプレイヤーへのインタビューなどをはさむことにより、当時彼らが見ていたものを探求、体験することができるようなものにする。

【ゲームシステム概要】

ゲームの舞台は1984年の東京。
ゲーセンに出現した新ゲーム「タワー」を誰よりも早くクリアするのが目的。「タワー」の内容は、基本的には、宝の出し方が一新された『ドルアーガの塔』。
宝の出し方は基本的には自分で探すのだが、原作同様、かなり不条理になっている。そこで、街のシーンで宝の出し方に関する情報を収集することになる。

自分で見つけた宝の出し方の情報を別の階の宝の出し方の情報と交換したり、情報が載っている同人誌をお金で買ったりして情報を集める。
ゲーセンで他のプレイヤーが遊んでいるのを見たりすることもできるが、肝心のところでダンボールを被って隠されたりする。しかし、テープレコーダーを持っていくと、音だけは録音することができるので、そこからキャラの動きを推理することも可能。
ゲームサークルに入ることで他のメンバーと情報を共有することができるが、他のサークルのメンバーがゲームをやっているところを見ようとすると、追っ払われたりする。
プレイ中、塔を登っていくにつれてギャラリーが集まってきて、ゲームのサウンドと別にギャラリーの騒ぎ声が聞こえてくる。


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 日本偽現実工学会会報 [The Bulletin of Japanese Fake Reality Engineering Society]
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