Review [KoroKoro-Kirby]

 【商品分析】

 コロコロカービィ(2000)

 2003 高沢秀人


コロコロカービィ」は2000年8月に任天堂株式会社から発売されたゲームボーイカラー用ゲームソフトである。

このソフトは、操作方法が一風変わっている。
カートリッジ内に加速度センサーが内蔵されており、傾きを検知することができるようになっているのだ。この機能を使って、バーチャルな「玉ころがしゲーム」を作ろうというのが、このソフトのコンセプトである。

ゲームボーイを水平に持ち、前に傾けるとキャラクターが前に向かって転がっていき、左右に傾けると左右に転がる。方向も傾きも、かなり微妙なところまで画面内のキャラクターの動きに反映される。さらに、フライパンでチャーハンを作るときのように、「跳ね上げ」もできる。跳ね上げの操作をすると、画面内のキャラクターも跳ね上がるのである。

これは非常に新鮮な操作感覚であった。
その新鮮さと、「カービィ」というキャラクターの知名度が相まって、このソフトは100万本近い大ヒット商品になった。

この商品の成功の最大の要因は、やはり目新しいセンサーを、うまく「玉ころがし」という直感的な結びつきのある題材と結びつけてゲーム化したことだろう。
ここが一番重要で、直感的な結びつきのないものだと、「やってみたい」という吸引力が出ず、やっていても納得感が薄いものになってしまう。

直感的な結びつきのある題材を見つけられたら、次に重要になるのが、その基本的な遊びに数十時間遊べるだけのネタのバリエーションをつけられるかどうかという点だ。
「玉ころがし」という題材なら、舞台となるボードの形が違うだけでも難易度に変化がつけられるし、坂や跳ね返る壁、それらを組み合わせたピンボール的な舞台など、いろいろ考えられる。ここまでくれば、その商品の実現可能性がかなり見えてくる。

どんなゲームの企画でも、題材自体の直感的な魅力と、題材とゲームシステムとの直感的な対応が最も重要でかつ立案が難しい点である。センサーを扱った企画の場合、その2つの点を一直線に結ぶ題材を見つけ出すことが求められるのだ。


しかし実はそれを「作る」というところが一番問題になる。ステージの作り方一つ・壁の置き方、敵の置き方一つで面白さがまったく変わってしまうからだ。これは素人にはできない。こういう細かい作りこみにこそゲームデザイナーの力量が発揮される。
この『コロコロカービィ』を作ったディレクターは、この前に『スーパーマリオブラザーズ』をゲームボーイに移植する仕事をやっていた。それがものすごく役に立ったそうである。
『スーパーマリオブラザーズ』にはアクションゲームの設計に関する基本的な考え方が、すべて詰まっているからだ。

※この「コロコロカービィ」、実際に遊ぶとすごく難しいです。
 また、ゲームボーイアドバンスSPでは、カセットを差す方向が逆になるので遊べません。


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 日本偽現実工学会会報 [The Bulletin of Japanese Fake Reality Engineering Society]
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